総合プロジェクトでは、学生たちが自身の研究・制作活動について発表・共有する「定例会」を月に一度開催しています。
第5回目となる今回は、来月に控える中間発表に向け、各プロジェクトが構想段階から具体的な「提案」へと進化しつつある様子がうかがえました。
産業観光の進捗報告
外国人観光客に「ものづくりのまち墨田」の魅力を伝えるには?
本プロジェクトは、墨田区産業振興課からの委託研究として、「すみだモダン」をはじめとした産業資源を観光にどう活用していくかを研究しています。
観光地としてスカイツリーに集中しがちな墨田区において、下町ならではの「ものづくり」や「人の魅力」を、いかに外国人観光客に伝えるか——。その課題に対し、検証と提案を重ねてきました。
初期段階では、ホステルや民泊を起点に、外国人が「目印」を頼りに下町を回遊できるよう、マップやロゴの設置を想定していました。
しかし、実際に留学生を対象に体験してもらったところ、「地図で見つけられない」「目印に気づけない」といった声が多数。単なる情報提供では不十分であることが明らかになりました。
そこで次の検証として、宿泊施設内に「箸の展示」や「飛び出す絵本」など、視覚・触覚を刺激する体験型の展示を設置。「見て・触れて・行ってみたくなる」導線づくりを模索しています。
さらに、観光ジャーニーマップや体験セット、口コミを促す街中サインなど、複数のツール開発も進行中です。
今後は、10月に「スミファ」、12月に「スカイツリー」でのイベント出展を通じて、「墨田の当たり前」が外国人にとっての「特別な発見」になるように検証を続けていきます。
墨田区のものづくりのまちとしての認知度を高め、質の良い製品を世界に伝える方法を引き続き模索していきます。
講評と今後の課題
指導教員からは、以下の講評と示唆がありました。一部ご紹介します。
・「観光客が目的地にたどり着くまでに時間がかかりすぎているのではないか」
導線が複雑で途中で興味を失う可能性がある。観光客が足を止め、離脱する「行動の分岐点」を丁寧に分析し、よりシンプルで自然な導線設計が必要。
・「数値での評価よりも観察が重要」
展示の前で足が止まる、手を伸ばす、視線が逸れるなど、現場での細かな行動を観察することで、新たな発想や改善点が見えてくる。こうしたリアルな行動の気づきをもとに生まれるデザインこそ、より人に寄り添ったものに。
・「現在のツールに“墨田らしさ”が不足」
ロゴや地図、ビジュアル表現で「ここが墨田」と一目で伝わる工夫が必要。
これらの講評を踏まえ、学生たちは現状の施策を見直し、ブラッシュアップを進めていきます。
定例会に参加して
観光とは、「自分で選べる自由さ」と「迷わない優しさ」が両立していること。
そのバランスがあるからこそ、観光客は思わず立ち寄りたくなる「楽しい寄り道」を楽しみ、回遊の終わりまで印象に残る体験になるのだと思います。
そこで学生たちは、墨田区の「ものづくりのまち」としての認知度を高め、質の良い製品を世界に伝えることに注目し、試行錯誤しながらデザインに取り組んでいます。
ただ情報を発信するだけでなく、「どう伝えるか」「どう体験につなげるか」まで、検証を重ねている点に、彼らの真摯な姿勢が表れていました。
また、指導教員の講評にもあったように、「墨田のらしさ」をどう可視化するか——
この問いは、今後の制作や検証において、より重要なテーマになっていくと感じました。
彼らのプロジェクトが終了した後も、「地域に住む人が自主的に続けられる仕掛け」や「観光客がSNSで自然に広めたくなる仕掛け」があれば、さらに面白く、広がりのある取り組みになるのではないか——そんな可能性も感じました。
学生たちが今後、どのような「デザイン」を生み出していくのか、とても楽しみです。
今回の定例会は、これまでの取り組みを振り返りながら、「今、自分たちがどこにいて、どこを目指すのか」を再確認する、貴重な時間となりました。
総合プロジェクトとは
総合プロジェクトは、これまで多くの研究室の学生が垣根を越えて参加してきた取り組みです。本年度は、環境デザイン研究室とシステムプランニング研究室の学生に加え、他の研究室に所属する学生も参加し、研究を進めています。
学生たちは、「産業観光」「子どもの居場所」「文化をPLAYする」「まちプロジェクト」「Work Space」に分かれて研究を行っています。
異なる研究室の学生が協力することで、多様な視点から問題を捉え、独自の気づきや仮説を深めることができます。こうして得られた学びや発見は、検証を重ねながら具体的なデザインに反映されます。
本プロジェクトは、多様なニーズに柔軟に対応でき、デザイン界をリードし、国際的に活躍できる人材の育成を目指しています。
墨田キャンパス:墨田サテライトキャンパスとdri | ちばだいプレス
アクセス:〒131-0044 墨田区文花1-19-1 東武亀戸線 小村井駅より徒歩5~10分


