「行動」につながる防災情報デザインを探る~4大学合同ワークショップ~ 

2025年8月5日(火)〜8日(金)の4日間、千葉大学墨田サテライトキャンパスにて、

千葉大学・千葉工業大学・台湾東海大学・台北科技大学の4大学が連携する防災ワークショップが開催されました。

本ワークショップは、4大学による国際連携教育プログラムの一環として実施され、

学生たちは多様な視点と協働のもと、「防災情報の伝え方」について深く考えました。

ワークショップ概要

本ワークショップのテーマは、

「異なる視点から生まれる新しいハザードマップ:多様なユーザーのニーズを探る」 (A New Hazard Map Emerging from Different Perspectives: Exploring the Needs of Diverse Users)

このワークショップでは、「防災・避難につながる新しいハザードマップのデザイン提案」を通じて、幅広い年齢層や国内にいる外国人に対して効果的に防災情報を伝える方法を探りました。

単に正確な情報を伝えるだけでなく、「行動」へとつなげる伝え方を模索し、参加者はインフォグラフィックやビジュアライゼーションを活用して異なる視点から議論を深めています。

活動の様子

国籍や文化を超えた10のチームが結成され、4日間にわたり英語での講義、グループワーク、フィールドトリップを行いました。

初日はチームビルディングと課題理解に時間を割き、以降は専門講義を受けながら多角的な視点でアイデア出しやプロトタイプ制作を進めました。

また、教員からのフィードバックを受けてアイデアを磨き上げ、最終成果の発表へとつなげました。

最終発表日の様子

学生たちはそれぞれ、防災・避難につながるデザインを提案しました。

以下はその中から5チームの企画紹介です。

チーム①:熱からの回避
都市の高温化を背景に、歩行者の安全と快適さを守る「Heat Escapeマップ」を提案。リアルタイムの熱情報とユーザー別ルート案内で、熱中症リスクを軽減する仕組みを紹介。

チーム②:地下鉄の緊急デジタルサイネージ切替システム
津波や浸水時に、地下鉄内の電子掲示板を避難案内に即時切り替えるシステムを提案。場所に応じた表示で混乱を防ぎ、乗客を迅速かつ安全に誘導する方法を紹介。

チーム③:「tsunavi」津波避難支援ウェブサイト
津波警報時に外国人観光客が安全に避難できるよう、多言語対応と視覚情報を活用した支援ウェブサイト「tsunavi」を提案。言語や地理の壁、パニック行動を解消し、効率的で安全な避難誘導を紹介。

チーム④:東京ソラマチにおける火災避難の色別誘導戦略
火災時に点滅ライトを用いた色別誘導で群衆の出口集中を防ぎ、避難時間と事故リスクを大幅に減らす戦略を提案。色で出口を割り当てることでスムーズかつ安全な避難を紹介。

チーム⑤:都市防災・安全建築システム
台風や豪雨による洪水リスクから浸水被害を防ぎ、生活基盤を守る都市防災・安全建築システムのアプリを提案。

学生たちの発表は、災害時に起こりうる課題を想定し、その解決策を柔軟に考えられていました。一方で、アプリの操作が苦手な人や体の不自由な方への配慮、実現性やリスクについて、気づくきっかけにもなりました。

ワークショップに参加してみて

自然災害は人の力ではコントロールできないからこそ、さまざまな文化や背景を持つ人々が、安全に避難できる方法を、私たちは絶えず模索し続ける必要があります。

「既存の防災情報から、実際の“行動”へとどうつなげていくか」。

 この問いに向き合いながら、学生たちは今回のワークショップを通じて、防災に関する知識だけでなく、実践的な課題解決力やデザイン思考を養うことができました。

それぞれの提案には、現実社会の課題に寄り添う視点と、使う人に届く防災デザインの工夫が込められています。

今後も、こうした国際連携型の教育機会を通じて、社会に貢献できる実践的なデザイン力の育成を目指してまいります。