墨田サテライトキャンパス発!定例会レポートvol.2  

前回参加した定例会から約1ヶ月。


学生たちの研究は、アイデアから実践へと少しずつ歩みを進めています。研究を重ね、地域と向き合い、問いを深め、現場で試行錯誤を重ねる姿からは、ただの授業を超えた「リアルな学び」が見えてきました。

今回は、プロジェクト「文化をPLAYする」に取り組む学生たちの進捗の一部をご紹介します。

「文化をPLAYする」とは?

YAMAHAと千葉大学デザインコースが、楽器メーカーとしてのPLAYの概念と、千葉大学墨田サテライトキャンパスエリアの蓄積した庶民文化の魅力を掛け合わせて、デザイン共同研究を進めています。

今回は、その一環で、墨田区の地域性や下町の木密地域の特徴を活かしながら、実際に町を歩いて調べたり、昔の文化について研究し、デザイン案を検討しています。そうした活動を通して、「文化をPLAYする(文化を愉しみがら体験すること)」や、その体験をもっとおもしろくするための道具や場所の工夫について考えを深めています。

花火をデザインする ― デジタルアプローチ × アナログアプローチ

「文化をPLAYする」という大きなテーマのもと、墨田の街をリサーチしていく中で、ある学生は「花火」に着目しました。

古くから人々に親しまれ、夏の風物詩として記憶に刻まれてきた花火。その魅力を、現代の技術と感性で再解釈し、新たな表現につなげるプロジェクトが進行中です。

先日千葉工業大学による東京スカイツリーでの花火演出の見学。アナログの繊細な感覚と、デジタル技術の広がりが融合したその演出に、強く心を動かされたといいます。

この体験を参考にしながら、自身のプロジェクトでもアナログとデジタルを行き来する実験的なアプローチを模索し始めました。

現在は、CGツール「Blender」を使った線香花火のデジタル表現に加え、「水」という花火とは正反対の性質を持つ素材にも着目。視覚・聴覚を通して人の感覚に訴えかける、インタラクティブな体験の創出を目指しています。

花火のような“爆発”や“高揚感”、そして人々が集まり一瞬を共に楽しむという花火本来の体験を、異なるかたちで生み出せないかを検討しています。

実施した検証の一部をご紹介します:

・線香花火をリアルにつくる

火花の「はじまり」から「終わり」までの変化を分けて観察し、その美しさを構造的にとらえ直すことで、新たな見方を探りました。

・水と光を使ったインタラクティブ

「雨水に光を投影したら面白いかもしれない」そんな発想から、水に衝撃を与えて生まれる音や波紋に光を組み合わせ、目と耳で楽しめる花火のような体験をつくろうと試みています。

昔ながらの花火というモチーフを、今の時代の技術でつくり変えていくことで、ただ再現するだけではない、「文化の新しい見せ方」を目指しています。

想像力と技術を組み合わせることで、花火という伝統文化がもっと自由に、もっと広がる可能性を感じました。

化粧行為を通じて向島花街文化を体験する

ある学生は「化粧」に注目し、江戸時代と現代のつながりについて研究しています。

調べていく中で、かつて化粧には呪術的な役割があったことや、歌舞伎役者が化粧文化を広めたとされていることを知りました。また、怪我を隠すために化粧が使われることもあったそうです。

現代では、化粧はマナーやおしゃれの一部として考えられていますが、昔から化粧には「見た目を整える」以上の不思議な力が込められていたのではないか。そんな仮説を立て、研究を進めています。

そこで、「紅差し指」で江戸と繋がるをテーマに、江戸時代の芸妓さんの感覚や意識を追体験しようと、芸妓さんへのインタビューやつまみ細工づくり(伝統工芸品)の制作を通して理解を深めています。

この取り組みを通して、江戸時代と現代の文化がつながり、日本の化粧文化や芸妓さんの世界について新たな視点で学び直すことができました。今後は、昔の文化と今の文化を上手に融合させ、多くの人が共感できるアプローチを目指していく予定です。

普段何気なく使っている化粧が、実は時代や文化によってさまざまな意味を持ってきたことに気づかされました。今後、この研究がどのように発展していくのか、とても楽しみです。

定例会に参加してみて

学生たちが地域や文化に真剣に向き合いながら取り組んでいる様子がとても印象的でした。単なるアイデアで終わらせず、実際に足を運び、手を動かしながら探究を深めている姿に刺激を受けました。

今後それぞれのプロジェクトがどのように形になっていくのか、ますます楽しみです!

次回の定例会レポートも、どうぞお楽しみに。

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